アラビアの女王 愛と宿命の日々
アラビアの女王 愛と宿命の日々
2017年1月21日(土)新宿シネマカリテほか全国順次公開
巨匠ヴェルナー・ヘルツォーク監督×アカデミー賞®女優ニコール・キッドマン

第65回ベルリン国際映画祭のワールドプレミアで大きな話題をさらった、ドイツ映画界が誇る巨匠ヴェルナー・ヘルツォーク監督、アカデミー賞(R)女優ニコール・キッドマン主演の『アラビアの女王 愛と宿命の日々』がいよいよ公開される。
本作は、20世紀初頭に“砂漠の女王”、“イラク建国の母”と称された実在のイギリス人女性探検家、考古学者、冒険家、詩人、登山家、諜報員とさまざまな貌をもつガートルード・ベルの悲恋に彩られた半生と、やがてアラビアに和平をもたらすに至る運命の旅を描いた壮大な大河ロマンである。

大英帝国の威光をそのまま反映するような裕福な鉄鋼王の家庭に生まれたガートルード・ベル(ニコール・キッドマン)は、オックスフォード大学を優秀な成績で卒業。社交界にデビューするも、その世界にまったく関心がなく、むしろ飼いならされたような、息がつまるような苛立ちをおぼえ、テヘラン駐在公使である叔父がいるペルシャへと旅立ったのを機に、アラビアの砂漠の魅惑にとりつかれていく。ガートルード・ベル自身が「シリア縦断紀行」の冒頭で次のように書いている。

「世の中の仕組みが細かく整っている所で育った者にとって、
荒野の旅の門出ほど心ときめくことは滅多に或るものではない。」

アラビアの地においてのベルは、時に勇猛な山岳部族のドルーズを訪問し、砂漠の遊牧民族(ベドウィン)と見事渡り合う。またある時は、部族間抗争が激しかった紛争地に飛び込んでいき、ハーイルの宮殿に命の保証もなく軟禁されるという憂き目に遭う。そしてかの、『アラビアのロレンス』で知られる若き日のトーマス・エドワード・ロレンス(ロバート・パティンソン)とシリアの遺跡発掘現場での運命の出会いを果たし、彼とはその後も人生の節目節目で再会することになるのだった。ベルは往復2,500キロの一人旅を断行、オスマン帝国の支配からアラブの遊牧民ベドウィンを解放、アラビアの地に和平をもたらしイラク建国に情熱を注ぎ、アラビアの民から尊敬の意をこめ“砂漠の女王”と呼ばれるまでになっていく。

このヴィクトリア朝時代の保守的なモラルを大きく逸脱した大胆な行動力を誇示する自由奔放なヒロインは、かつてニュージャーマン・シネマの鬼才の名をほしいままにしたヘルツォークが、初期の傑作『アギーレ/神の怒り』(72)や『フィツカラルド』(82)で描いた、秘境への憧れを抱えた主人公たちを想起させずにはおかないだろう。さらに本作は、ヘルツォークがその長きにわたるキャリアの中で初めて女性を主人公にした実話の映画化であり、そのヒロインをアカデミー賞®女優ニコール・キッドマンが演じるという奇跡のコラボレーションが結実した。

本作ではかつてアカデミー賞を総なめにし、デヴィッド・リーン監督の名を世界にとどろかせることとなった『アラビアのロレンス』のごとく、冒頭から刻々と形姿を変えていく砂漠、何百メートルもの深い渓谷に清流が流れる息を呑むような美しい風光の中を歩く豆粒のような人物を、4Kカメラが大俯瞰でとらえ、鮮烈な印象を残す。そこにはヘルツォーク独特の超自然的なものへの畏怖、超越的な視点が強く感じられる。そしてもうひとりの『アラビアのロレンス』のごとく立ち現れるニコール・キッドマンは、強く、気高い意志を持った新たなヒロインとして登場するが、一方でその艶やかな美貌は、その気高さゆえにいっそう際立っている。とりわけ、砂漠の真ん中で木枠のバスタブに水を注ぎ、薄着をまとった彼女が入浴するシーンは幻想的なまでに美しく、忘れがたい。

彼女の決断が、やがて世界を動かす――

20世紀初頭、ひとりの女性が英国を旅立ち、アラビアの地へ向かおうとしていた。彼女はイギリス鉄鋼王の家庭に生まれ社交界にデビュー、オックスフォード大学を卒業した才女ガートルード・ベル。自由なトラベラーであり、考古学者であり、諜報員ともなった彼女は、やがて“イラク建国の母”と称されるほどにアラビアの地に根付き、情熱を注いでいくのだった。望んでも叶わない2度の悲恋、ロレンスとの出会い、度重なる困難―-。それらが彼女のこころを嵐のように翻弄し大きな傷跡を残したとしても、約束の地こそが、彼女の大いなる生命の源となっていく――。やがて時代は大きなうねりとともに転換し、彼女はその渦の中心の存在となっていくのだった…。

監督・脚本:ヴェルナー・ヘルツォーク
出演:ニコール・キッドマン、ジェームズ・フランコ、ダミアン・ルイス、ロバート・パティンソン

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